悪性腫瘍と言いますと、がんとらえがちですが悪性腫瘍イコールがんではないという事です。
悪性腫瘍には、粘膜上皮や粘液上皮を構成している細胞が悪性化した場合を『がん』として、上皮ではない組織(筋肉細胞、骨、血液、リンパ球)が悪性化する『肉腫』などとに分ける考えがあります。
タイプを分類することは、治療方法も異なり、再発率や生存率にも差が有るので、治療を始める前にどんな組織に出来ているのかは大切な判断になります。
甲状腺で起こる悪性腫瘍は主に5つのタイプ(組織型)があります。
① 乳頭がん
② 濾胞癌
③ 髄様がん
④ 未分化癌
⑤ 悪性リンパ腫
私が栄養カウンセリングの生業をして18年の間に、悪性腫瘍の病気でのご相談を受けたケースでは乳癌と並んで同じくらいの印象です。
また甲状腺の病気そのものでのご相談ではなく、病歴をお聞きしていく中で、「甲状腺のがんで手術しました」「甲状腺の手術をして〇年になります」とお話しする方も多い印象です。 過去の病気・治った病気ととらえている方々も多い印象です。
甲状腺がんの多くは、発育がゆっくりで、悪性度も低い「おとなしい」タイプのがんです。
しかし中には急速に進行するタイプのがんもあります。甲状腺がんは種類によって性質が全く違うと考えられています。
病歴(過去の病気)・現病(現在治療している病気)も含め、私が栄養カウンセリング業で関わった①と②について、分子栄養学研究所の栄養手引き、伊藤公一著甲状腺の病気より学んだことを書いてみます。
① 乳頭がん
日本人がかかる甲状腺がんのうち、80%~90%を占めるといわれています。腺がん(ホルモンを分泌する上皮に出来るがん)のタイプです。早期は良性腫瘍と同じようにしこりがあるだけ。発育がゆっくりで、何年たってもほとんど変化しない、ある意味タチの良いがんとしての考え方もあります。しかしある時期から急速に進行する事もある様です。進行が遅い割には、甲状腺近くのリンパ節への転移がみられるケースも多くあると。大部分の乳頭がんは手術で治ります(伊藤公一著甲状腺の病気より一部抜粋)とあります。
私の方にご相談に来られた方の多くの方(ほとんど女性)が、過去に乳頭がんの手術をしたと、病歴聴取で有りました。現在その病気の治療をしているわけではないが、甲状腺摘出(特に全摘の場合)後から徐々に起こった体の不調でのご相談でした。
甲状腺手術後の嗄声(声枯れ)、ホルモンを分泌する甲状腺が無いので甲状腺機能低下症になり薬を飲んでいる。
また甲状腺と付随してある副甲状腺も摘出されるので(特に全摘の時)、カルシウムの代謝を調整するホルモンの副甲状腺ホルモン(PTH)が働かずに、血中のカルシウム低下症、心臓の不整脈を起こしているケースもありました。
栄養素の摂取の面でのサポートでは、悪性腫瘍の再発・転移の抑制としてビタミンA、ビタミンD3、エネルギー産生に関わる甲状腺ホルモンのサポートとしてビタミンB群、貧血改善、カルシウム代謝の改善としてビタミンB群、コエンザイムQ10 、カルシウム・マグネシウムの摂取が勧められました。
② 濾胞癌
濾胞癌は、甲状腺がんの中では乳頭がんに次いで多く、全体の10%ほどです。首にしこりがある事で気が付く事が多いですが、しこりを超音波検査だけでは良性の濾胞性腫瘍との区別がし難く、診断が難しいタイプといわれてます。乳頭がんに比べて周囲リンパ節への転移は少ないですが、骨や肺など遠隔臓器へ転移する傾向があります。
濾胞がんも乳頭がんと同じく、甲状腺の濾胞細胞(甲状腺ホルモンを作る細胞)が、がん化したものです。この濾胞細胞の本来の働きは、食べ物から取り入れたヨードを摂りこんで甲状腺ホルモンを作る事です。
この性質を利用して、肺や骨へがんが転移している場合、手術で甲状腺を全摘して後に、アイソトープのカプセルを服用します。するとアイソトープは転移部分に集まり、放射線(ベーター線)が発せられ腫瘍内部からがん細胞から破壊します。アイソトープ療法を行う時には、汗・尿・唾液などの分泌物に放射線が含まれるため、数日間専用の病室に入り管理される必要があります。
私に栄養サポートのご相談があったケースは2名ですが、2名の方とも40歳以上の男性でした。
栄養素の摂取の面でのサポートは、乳頭がんと同様です。そしてアイソトープ療法を受ける際には、放射線の暴露から本人の身体を守る為の手当として、ビタミンCの多量摂取、グルタチオン、αリポ酸などが勧められました。
はい、今日はここまでとします。
参考文献 分子栄養学研究所発刊/栄養手引き
伊藤公一著/甲状腺の病気
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