十数年前になりますが、甲状腺機能低下症の橋本病の病態にあるA子さんのサポートに関わり
そして現在もその方の甲状腺ホルモンを中心に検査結果、ご体調の事を聞かせて頂いています。
A子さんの病態を通して学んだ甲状腺疾患の知識でもありますが、そのきっかけはその後の私のカウンセラーとしての姿勢の原動にもなっていると感じます。
様々な疾患があり栄養的サポートを希望して来られるクライアントさんと向き合うには、臓器・組織の働き、代謝に対しては看護師時代以上に知識とカウンセリング力が求められていると感じます。
今回は初心に戻りというか、A子さんの病態をサポートしている時に学んだことなどを振り返り、甲状腺疾患についてまとめていきたいと思います。
【甲状腺とは?どこにある? 】
甲状腺が首の前、喉のあたり、のどぼとけの下にあるという事は多くの人はすでにご存知でしょう
甲状腺の大きさは縦4㎝ほど、横に蝶々が羽根を広げたようにあります。厚さは数ミリ、重さは18g程といいます。
すぐ後ろにある呼吸器の気管を抱き込むようにはりついています。
甲状腺は平たく柔らかい臓器なので、普段は皮膚の上から触っても解らないのですが、硬くなると手で触れられるようになります。またある程度大きくなると、見た目で腫れているのが分かるようになります。
(私ごとですが、30歳代中ごろ、体重40㎏未満ととても痩せている頃に、自分自身で甲状腺が腫れている?と心配になり、甲状腺専門医をたずねた事があります。医師は触診と嚥下でのどの様子を診て問題なしと言われました。のど仏がくっきり出るくらい痩せている事での自分勝手の勘違いでした)
【甲状腺とは? どんな臓器?】
私達は自分自身が健康な時には、甲状腺という臓器の存在を意識することはないと思いますが、ヒトが健康を維持していく上で、それはそれは大切な役割をしています。
甲状腺から分泌されるホルモン(甲状腺ホルモン)があるからこそ、体中の新陳代謝が円滑に行われています。
胃腸などの消化器・心臓などの循環器・脳・神経・骨代謝系、子どもの成長促進になどにも影響します。
【甲状腺は内分泌器官のひとつです】
私達の体では、ホルモンを作り血液中へ分泌する細胞の集合体(内分泌腺)があります。
甲状腺もその仲間の一つです。
病院によっては、『甲状腺科』とあるかもしれないし、『内分泌科』とあるかもしれません。
甲状腺に付随してある副甲状腺ホルモンも甲状腺とは全く違う働きをしますが内分泌器官の一つです。
膵臓から分泌されるインスリンホルモンと関連し、糖尿病も診療科は内分泌科としている病院も多いです。
他内分泌に属するホルモンとして、副腎皮質から出るストレス対抗ホルモン、卵巣から分泌される女性ホルモン、精巣から分泌される男性ホルモン、これら内分泌器官は脳の下垂体から分泌されるホルモンによってコントロールされている。(まだ全然知らないことだらけです…)
『ホルモン』とはギリシャ語で『呼び起こす』という意味があるのだそうです。 その名前の通り、眠っている体を目覚めさせ代謝や成長を促進するという事なんでしょう。
ホルモンというと、まとめて一つの事とか考えがちですが、様々な器官で様々なホルモンが作られ、それぞれ全く違う働きをしています。
【甲状腺ホルモンは脳のコントロールを受けている】
甲状腺ホルモンは体内のほとんどの臓器を刺激し影響しています。ですので甲状腺ホルモンが一定の値に維持されていないと、体のいたるところで不具合がでてきます。
甲状腺ホルモンを体内でうまく調整するには、脳でのコントロールが欠かせません。
脳の視床下部と下垂体という場所でコントロールするホルモンが分泌されます。
その中でも中心的に働いているのが下垂体です。この下垂体も内分泌器官の一つです。
下垂体では甲状腺ホルモンの合成・分泌を促す甲状腺刺激ホルモン(TSH)を分泌しています。
TSHは甲状腺ホルモンの量の調整も行います。
血液中の甲状腺ホルモンの量に反応して、増えすぎた場合はTSHの分泌を抑え、それに伴い自然に甲状腺ホルモンの分泌が抑えられます。
逆に甲状腺ホルモンの濃度が低くなった場合は、TSHの分泌量が増え、甲状腺に対してもっとホルモンを合成・分泌するようにと促します。このようなしくみをフィードバック機構と呼ばれています。(私は電気機器にはとても弱いのですが、フィードバック機構はよく電気機器のサーモスタットの様と例えられます)
この甲状腺ホルモンシステムに、もう一つの役割を担っている視床下部があります。視床下部は下垂体の上に位置し、下垂体に支持を出す働きの甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)を分泌しています。会社組織に例えると、甲状腺で働く甲状腺ホルモンは社員さん、その上の指揮系統のTSHは部長さん、TSHの上層部TRHは社長さんと、いう感じでしょうか
【甲状腺ホルモンとは?】
甲状腺ホルモンはビタミン・ミネラルの様な栄養素と違い、外から体内へ取り入れる事は出来ません。
甲状腺の細胞で作るしかないのです。ただし材料は昆布やわかめに含まれるヨードです。
食べ物から取り入れたヨードは腸で吸収され血液を通して甲状腺にたどり着きます。
甲状腺の細胞(甲状腺濾胞細胞)で濃縮されどんどんストックされていくので、毎日ヨードを摂る必要はない、私達日本人は普通の食生活をしているとヨード欠乏に陥る事はないと言われています。
甲状腺ホルモンにはサイロキシン(T4)と、トリヨードサイロニン(T3)の2種類がありどちらも甲状腺で作られ血液中に分泌されます。
血液中の分泌量の割合は、T4が中心で、T3は2%ほどしかないと。
甲状腺ホルモンがそれぞれの細胞で本来の働きを発揮するには、それぞれの細胞の甲状腺ホルモン受容体と結合しないといけませんが、その結合力はT3の方がT4の10倍ほど強力で、甲状腺ホルモンとしての活性もT3の方が10倍も強力なのだと。
しかし、分泌されてから活性を失い血中から無くなるまでの時間がT3の方が短いと。
強力で短命という感じですね。
本来の甲状腺の働きはT3だと聞き及んでますが、通常医療保険の初診検査やフォローアップ検査ではT4で診ているのはそんな事情もあるのか…と、思ったりしています。
T4はヨード元素を4個、T3はヨード元素を3個含んでいます。
通常、体が健康であれば、T4は肝臓や腎臓での代謝で酵素によりヨード元素が1個外れてT3に変化します。
栄養状態が良い場合は、T4は活発にT3へ変化し、逆に栄養状態が悪いや飢餓状態のときはその変化を停滞させます。省エネモードにはいるんですね。
甲状腺機能低下(甲状腺分泌量が低い)の橋本病などで処方される甲状腺ホルモン剤、チラージンS錠は、T4を薬剤です。T4で補給し、体内のエネルギー状況や体内環境の変化に応じて、必要なだけのT3を作るように調整する方が患者さんの体にとってはやさしい治療法だとの考えがあるようです。
今回はここまでにします
甲状腺の事、甲状腺疾患の事について次回に書きます
(参考文献)
伊東公一著 甲状腺の病気
分子栄養学研究所発刊 吉田京子著 金子塾
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